10m以上のコンクリートや鉄鋼製品の寸法測定や形状測定のため、3Dスキャナの導入が増えてきています。3Dスキャナには据置型のものとハンディタイプのものがあり、製品をスキャンし、3Dデータ化することで寸法や形状が3次元で測定することができるツールです。しかし、3Dスキャナはすべての製品を高精度にスキャンし、3次元測定ができるわけではなく、メリットもあれば、デメリットも存在します。
大型の対象物を測定する上で、どんなツールを選択すればいいのか。3Dスキャナの良さとあわせて、3Dスキャナに代わる3次元測定機もご紹介いたします。
3Dスキャナとは、形状測定を行う立体物の凹凸を感知することで、高さ・横幅・奥行のXYZ軸の3次元座標を取得し、対象を3Dデータ化するツールです。形は据置型とハンディタイプの2種類がありますが、計測原理で分類わけをすると、下記の2つになります。・パターン投影カメラ方式:プロジェクタ一体型で対象物に縞模様やランダムパターンを投影し表面形状を取得する・光切断方式:ラインレーザーを用いて反射光を三角測量し、形状を取得する
パターン投影方式は据置型で固定して使用する場合が多く、比較的小型の物を対象としています。大型対象物の3次元計測に適しているのは光切断方式の3Dスキャナのため、ここでは後者のメリットとデメリットについて解説します。
・任意の位置から断面図が作成可能・人が立ち入ることができない場所のデータを取得・複雑な形状が計測可能
3Dスキャナは、測定対象物に直接接触することなく、レーザー光を照射することで、反射する時間差や照射角度から形状を解析、3Dデータを取得します。そのため対象物と離れた位置から寸法測定・形状測定をすることができ、建造物の3次元測定に適しているといえます。
・高精度なデータ取得が困難・製品検査等、測定したい箇所がピンポイントな場合は測定が難しい・取得したデータの後処理の手間がかかる・測定不可な対象物がある
3Dスキャナには、メリットがある一方で、精度が劣ることや計測したい箇所をピンポイントで測定することは難しいといったデメリットがあります。また、レーザースキャナを用いた3Dスキャナは、1度で対象物の形状を読み取れるものではなく、複数回スキャンした上で、取得したデータを1つに結合する処理が必要です。さらに、スキャンできない箇所の補完や修正、ノイズ処理等の手間も発生し、専門知識が必要となります。
3Dスキャナを使用した形状測定は、対象によって測定可能なものと不可能なものがあります。・黒い対象物・光沢のある対象物・鏡面状の対象物
3Dスキャナでの測定は、光線を照射して測定する対象物が光を反射することが前提となっています。
そのため光を反射しない黒い対象物や光沢のある対象物、鏡面状の物はうまくスキャンすることができず、取得したデータが十分でない事象が起こります。
このような事象の場合は、スプレーを対象物に吹き付けることで測定を行います。しかし、対象物によってはスプレーを吹き付けることができないもの、許されないものがあるため、すべての場合で回避できるというわけではありません。
自動車のヘッドライトやガラス、タイヤのゴム等は3Dスキャナでは測定が困難といわれています。
また、任意の箇所だけにピンポイントに絞った測定が難しいといった点も挙げられます。
アーム式、門型式3次元測定機による測定とは、測定したい対象物にセンサーやプローブを接触させ、座標データを取得する方法です。
精度や手間、測定対象に関してデメリットがある3Dスキャナとは異なり、プローブを用いた3次元測定機は精度が高いことがメリットとして挙げられます。
しかし一方でプローブ自体がアームや門型式装置に取り付けられていることから、測定可能な範囲に制限があります。
アームの稼働範囲外であったり、門型に収まり切らないサイズの大物製品や深部、入り組んだ形状のものは測定が難しくなっています。
たとえば、コンクリートや自動車のボディ、10m以上の大物の他、入り組んだポンプ等は接触式3Dスキャナでは測定が困難です。
従来の3次元測定機では測定が難しい大物の対象物や入り組んだ対象物、また、3Dスキャナでは測定困難な透明な対象、黒い対象を測定するには、新たな測定方法が必要になります。
モーションキャプチャシステム「OptiTrack」と測定ソフトウェア「SKYCOM TOUCH」から構成される3次元測定システムは、測定範囲に制限がなく、大小様々な対象の測定ができます。また、透明な対象物や黒い対象物の形状測定や寸法測定が可能です。
アーム式や門型式といった3次元測定機のデメリットは、稼働範囲に制限があるため、測定対象に限りがありました。3次元測定システムはワイヤレスかつハンディなプローブを用いて測定するので、稼働範囲に制限なく測定することが可能です。
このとき、測定環境は「OptiTrack」カメラを使って構築します。対象物を「OptiTrack」カメラで囲み、その空間内でプローブを用いた測定を実施。カメラはプローブに貼付されたセンサー(反射マーカー)を認識し、プローブの先端が接触した座標データを取得します。
対象物をカメラでスキャンするのではなく、プローブの位置情報を取得するため、測定したいものが透明であっても黒いものであっても形状測定が可能です。3Dスキャナのデメリットが解消されるシステムとなっています。
また、3次元測定システムには測定結果をリアルタイムに記録し、出力できる機能が搭載されています。そのため、測定結果を別途記録する手間がなく、工数の削減が可能。専門的な知識は必要なく、後処理の必要もありません。誰でも簡単に3次元測定ができるという点からも、実際に大物のコンクリート製品や自動車の部品の寸法や形状測定に用いられています。
参考:大型試験装置の3次元寸法測定 3Dスキャナに変わる形状測定
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